チビ母さん

実家には3匹猫がいて、最年長が『チビ』、その息子が『コキチ』、
そして彼らが居座り始めた数年後に、弟が拾ってきたのが『ダンくん』です。

昨日、チビ母さんがお空へ旅立ちました。14歳。
離れて暮らしている私は、まだ実感がないけれど、実家に帰れば寂しさが溢れてくるのかな。

けれど、苦しみを伴う悲しさがないのは、勝手ではあるけれども、
チビは結構、幸せな人生だったんじゃないかなぁ、天寿を全うしたんじゃないかなぁ
と、思えるからかもしれません。


 *


我が家は元々、手乗り文鳥を飼っていたし、私と弟がアレルギー持ちだったため、
猫は飼えないものと思っていました。

それが、私がカナダから帰国してみると、母が玄関先で2匹の猫を餌付けしていたのです。


母は、毛が長くて、まるっこい体つきの方に「マル」、
毛が短い方に「チビ」という、投げやりな名前をつけていました。


私も、餌付けを知る前に、彼らを近所で見かけていました。
えらく目つきの悪い、不細工な猫の兄弟がいるなぁと思っていたのです。
餌を食べる彼女らを撫でようとしたら「シャッ!」と引っ掻かれました。
「(餌は頂くが)人間なんて、大嫌いだ!」と言い放つ、もののけ姫・猫ver.みたいな感じでした。



そのうち、チビのお腹が膨らんできていることに気づきました。

まだ、1歳になるか、ならないかの、子猫の面影が残る小柄さだったのに。
早熟にもほどがある(※ 猫界では普通)


そして、しばらくすると、お腹をスッキリさせて、再び餌を貰いに一人で帰ってきました。


さらにしばらく経って。
今度は、おまけを連れてやってきました。


それが、息子の「コキチ」です。 

過去、なんどか猫を飼ったことのある母をして「世に稀に見る、可愛い天使子猫」と言わしめたコキチ。


この頃には、チビも、険しい表情が次第に緩んできておりました。
本来彼女は、美形の猫だったのです。
コキチはその血を受け継いでいたのです。 


なお、そんな天使猫コキチさんの数年後 

(目を開けてあくびする派なのか?)


コキチの育児が終わった頃を見計らって、避妊手術をせねば…… 
しかし、あの凶暴猫をどうやって捕まえよう?



そうこうしているうちに、またもチビのお腹が膨らんできました。



コキチが産まれて3ヶ月経ってないのに。
早熟なだけじゃなくて、なんて遊び好きな女だろうか。
以来、私は彼女をア◎ズレと呼んでいました。(※ 猫界では普通の現象です)


……などと冗談言ってる場合ではないけれど、膨らんでいくお腹を止めるわけにはいきません。


我が家に対しても、徐々に心を開いてきてくれていたのか、
このときの出産は、我が家の縁側の下で行われました。

黄色いのがカルボナーラ色で「カルボ」

靴下のが「ジタン」

唯一の女の子が「ミーちゃん」

未熟児で目がほとんど開いてなかったのが「クニエ」

……と、それぞれ名付けられました。 

(※ クニエの目は、後に目薬で治りました。)


柄が数種ありますが、猫って、複数のオスの子を同時に産むことが出来るらしく、
そうすると、こういうことになるんだそうです。 


早熟で遊び好きなだけじゃなく、何股もかけていた、徹底的に悪い女です。
(※猫界では普通です) 

美形だったので、モテたのでしょうか。
中でも一番母親似だったのは、唯一のメスの、ミーちゃんでした。

子猫たちの貰い手は無事、どうにか見つかりました。

ただ、コキチだけは、なぜか生後数ヶ月で劇的に成長してしまったため、
我が家で面倒を見ることになりました。

産まれてすぐに、「兄貴」をしないといけなくなったため、大きくならざるを得なかったのかもしれません。
あるいは、兄弟たちに混ざって、おっぱいを飲み続けていたために、でかくなったのか(笑)

どうにか信頼を得たのか、次第にチビにも触ることも出来るようになり、
ようやく捕獲に成功、彼女の避妊手術も無事済ませられました。



その後、しばらくして、我が家の最後の文鳥(プーちゃん)が天国へ羽ばたいていったため、

彼らは半ノラから完全飼い猫に。


焦らず徐々に慣らしていったのがよかったのか、
私のアレルギーは気づけば、我が家の猫に限っては発症しないようになったのでした。
弟のぜんそくは、子どものとき限定だったので、何も問題なかったようです。


*


チビの天敵は、ダンくんだったと思います(笑) 

文鳥もいなくなり、自分の天下がやってきた!
……と思ったところに現れた、甘え上手なアイドル気質の小僧。


よく、死闘を繰り広げていましたよ。
大抵、ダンが、チビを「やーい、ババア(意訳)」と言っておちょくり、
チビが「フガー!」と飛びかかっていくのがお約束だった。
逆に、通りかかっただけのダンに、チビが一方的にパンチ喰らわすことも多々。


ノラ出身のチビは、甘えるのがヘタ。
甘えたいのに、うっかり噛み付いて怒られたり、
怒られなくても、「あっ、やっちゃった!」って“しまった顔”をしたりしてた。

爪を切ってもらった後は、上がったテンションを持て余して、スキップして爪研ぎに突進していったり。

首輪をつけたときも、元ノラだから違和感を嫌がるかと思いきや、

どうやら家の猫になったことが嬉しかったらしく、おとなしくつけておりました。


そんな愛に飢えた、不器用な彼女にとって、生まれついてのアイドル猫・ダンは、
自分が持っていないものをいっぱい持ってる存在だったので、嫉妬の対象だったのかもしれません(笑)



チビは、頭がよかったです。というか、妙に賢かったです。

わざといじわるをしてやると、“数分後に”、足にパンチしてきて腹いせしたり、
扉の前でわざと伸びをして、
「あっ、うっかり手が当たって開いちゃった☆」
みたいなパフォーマンスをして扉を開ける、なんていう技も持っていました。


コキチはコキチで、いくつになっても甘ったれの息子なので
人間にいじり倒されて、ムカムカしてくると、チビに飛びかかっていって、腹いせをしていました。

猫の世界でも、人間の世界でも、息子と母ちゃんの関係は同じのようです。



辛い時代を過ごした元ノラだからか、心地良いものに目がないところもあった。
ふかふかのクッションは絶対自分の物にしてたしね。
よって、私は彼女のことを「成金猫」と呼んでいたことも。(扱いがひどい)

晩年はボケが始まって、わあわあ喚いていることはあったけど、

最後まで粗相らしい粗相をすることもなく、何の迷惑もかけず。

そして甘え下手のまま旅立ったんだなぁと思うと、ちょっと切ない。


もし、次もまた、猫として産まれてくるなら、
ノラから始まるのではなく、猫飼いのおうちの、幸せな子猫として生まれてくるといい。
そして、一生、暖かい家で暮らせますよう。


猫の一生は、人の手にその幸福が委ねられているんだと、つくづく思います。
人間として生きるのは大変だ、のんきな猫に生まれたらいいなぁ、なんて思うこともあるけど、
それは幸せな「家」に生まれた場合の話。



また、うちに来るのもいい。
生涯大切にすると、約束するから。

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